![]() | GRASSHOPPER―ONAKA Koji=2001‐2005 尾仲 浩二 (2006/05) 冬青社 この商品の詳細を見る |
風景写真に入れ込んでいた手前、これまで写真集というものは結構買って持っているのだが、正直言って「感動」したと言えるものは皆無だった。どれも「うまく撮ってるねえ」とか「一番いい時に訪れたねえ」と「感心」することはあっても、心の底から感動することはなかった。「ふ〜ん、それがどうした」とか「何か小細工してるんやろ」くらいの感想しか出てこない。「感動」と「感心」は全然違うのだ。
しかしこの写真集に出会って本当に「感動」した。ページをめくった瞬間から心の琴線に触れるものがあった。どこかで見たことがあるような、忘れていた遠い記憶を思い出させてくれるような懐かしさが込み上げてくるのである。この写真集に収められている風景は、普通の人なら誰もカメラを向けようとはしないであろう、地方に行けばどこにでもあるようなうら寂れた風景ばかりである。「種明かし」みたいに巻末に撮影地が記されているのもちょっとしたサービス精神で嬉しくなる。
尾仲氏の作品には一貫して流れる特徴が見られる。おそらくネガフィルムで撮影しているのだろうと思われるが、少しくすんだような暖かみのある色調がセンチメンタルな感情をより高めてくれる。そして象徴的に現れるモチーフ・・・煙突、船、小さく写る人物、低く垂れ込めた雲・・・などはいったい何を暗示しようとしているのだろうか? それはあたかもジョルジョ・デ・キリコの絵画を彷彿させるものである。
巷にあふれる「風景写真」、それはいかにして挟雑なものを取り除き、「きれいなもの」だけを見せるかという言わばウソの自然をでっち上げたものに過ぎない。そのためだけに多くの人間が非常識な行為を繰り返しながら狂走しているのである。うわべだけの「風景写真」なんかもういらない。
このジャンルは「風景写真」でもない、「スナップ」でもない、「旅写真」という分野に入るのだろうか。あちこち旅をしながら心に触れた風景をありのままに撮るというスタイルである。一見誰にでも撮れそうに見えるが、これはそう簡単に撮れるものではない。感性ももちろん必要だが、それだけでなく計算も必要だろう。尾仲氏は最近新人賞を受賞したばかりの新鋭であるが、その観察眼はキラリと光るものがある。今後が大いに期待できる写真家だ。
何事にもモチベーションというものが必要だが、久々に「こんな写真が撮りたい」とモチベーションを高めてくれる一冊であった。
![]() | 自転車で痩せた人 高千穂 遙 (2006/04) 日本放送出版協会 この商品の詳細を見る |
たまたま図書館で見つけたので借りてみただけ。特におすすめってわけじゃないけど、タイトルが面白かったのでネタにしてみる。(^_^; 自転車で痩せたためしのない僕には気になるタイトルだったので・・(爆)
著者の高千穂氏はSF作家ということだが、氏の作品を読んだこともなく、まったく名前も知らなかった。まあそんなことはどうでもいいんだが、著者はもともと体重84kg、体脂肪率24%の肥満体型で、おまけに高脂血症などの生活習慣病をいくつも抱えていた。そこから一念発起して自転車トレーニングを始め、二年間で24kgの減量、体脂肪率は一ケタ台に乗せることに成功し、さらには健康診断の結果もすべて正常値に戻ったという絵に描いたようなサクセスストーリーだ。「自転車で痩せない人」の僕には「ほんまかいな?」と眉唾もので読んでしまう。(^_^;
ちょっと読んでみればわかるけれども、著者は自転車ツーキニストで有名な疋田氏の本に感銘を受け、50歳を過ぎてから自転車を始めたと言っている。だから書いてある内容はほとんど疋田氏の「自転車生活の愉しみ」や「快適自転車ライフ」の焼き直しとも言える。それ以上のものではないだろう。どちらかというとダイエットに重点を置いているとは言えるものの、スポーツ医学の観点から当たり前のことを言っているに過ぎない。まあ疋田本を読んだことのない人には面白いかもしれないが、知っている人はあえて読むほどのこともないと思う。
二年間で24kgというと、一ヶ月あたり1kgの割合だから、そんなに無理な話でもないと言えるが、僕には絶対に無理な数字だ。一年かかっても1kg痩せることはできない。その秘訣は何なのか?と大いに興味があった。
結論としては、毎日自転車に乗り続けるというごく当たり前のことだった。正確に言うと毎日やり過ぎるのは良くないので、週に4日は必ず走ることを日課にするのだ。著者は作家だから通勤の必要がない。だから平日の昼間に走る。僕はヒマ人だから通勤の必要がない(爆)。だからやろうと思えばいつでもできる。でも絶対できない。用もないのに毎日2時間も自転車に乗るなんてできるわけがない。著者は走ること自体が楽しいから、やめようと思ってもやめられない、自転車中毒だというが、とてもそんな心境にはなれない。僕は一度ツーリングに行ったら一週間は自転車に乗りたくなくなる。似非サイクリストなんだな・・。
ショッキングな言葉が一つ。週に一回100km走っても何の意味もないってことだ。それよりも毎日20kmずつ5日走った方がはるかに効果は高い。だから痩せないんだよな・・。わかっちゃいるけど、それができたら誰も苦労しない。結局、ダイエットに王道はなし。よほど強い意志がなければ、ほとんどの人はここで挫折する。そういう当たり前のことを言っているに過ぎないのだ(爆)。
だいたいダイエットを目的にした運動は絶対に続かないと言ってよい。著者みたいに健康上よっぽどヤバイ状況にならない限り、そこまでモチベーションは上がらないんじゃないかな? どっかのブログで見かけたけど、体重とか体脂肪率の推移グラフプラグインってFC2にはないのかな? モチベーション上げるためにあれでもやるか?(爆)
まあこの本を読んだからと言って痩せるとは保証しない(笑)。今まで乗らなかった人が、自転車は楽しそうって気になるかなぁ? 逆にしんどそうと思ったりして(爆)。しかし一つだけ心から共感できることがある。それは寒さに弱いってことだ。著者も冬が大の苦手で典型的な夏型人間。いくら汗ダラダラでも夏がイイもんね。そこだけは僕も同じだよなぁ・・。
ひさしぶりに書評ネタでも・・
もうずいぶん前に読んだ本だけれども、未だに忘れられないのがこの二冊。「おじさん」とは銘打っているけれども、何もおじさんだけでなく、若い人や女性も含め、すべての人におすすめしたい名著である。自転車に乗る人は共感するところが大きいだろうし、自転車に乗らない人には目から鱗が落ちること請け合い。僕の人生観にも影響を与えた自転車文学の最高傑作である。
この本はよくあるサイクリングのハウツー本などではなく、自転車のことについてそれほど詳しく書かれているわけではない。むしろ自転車の素晴らしさ、自転車の楽しみ方といったマインド面に重点が置かれている。しかし実はこの本の本質は自転車にあるのではなく、「大衆批判」にあるということが読み進むうちにわかってくる。
著者の長尾氏は「超」がつくアナログ人間であり、パソコン、メール、携帯電話、デジタルカメラなどの文明の利器をすべて拒否し、いっさい所有しないほどの徹底ぶりである。「便利は地獄、不便は極楽」が著者の持論だ。中でも便利なモノの代表であるクルマについて徹底的にこき下ろしている。
「大衆」とは、言い換えれば規格化された人間のことである。考え方や行動がパターン化しているということは企業にとって扱いやすいターゲットであり、大事な「お客様」となる。したがって世の中の経済原則はすべて大衆に照準を合わせているといっても間違いではない。中でもクルマは大衆が欲しがるモノの筆頭であり、クルマこそが大衆的なるものの象徴とも言えるのである。そこには人間の欲望のすべてと現代文明の矛盾のすべてが詰まっているのである。
著者はクルマを捨てて自転車に乗ることにより、忘れていた身体的感覚・・・ペダルを漕いで汗を流し、風を切る爽快さ、鼓動の高まり・・・を取り戻せと叫んでいる。行き過ぎた便利さは人間を不幸にし、不便こそが本当は楽しいのだということに気づかせるのに自転車は最高の手段であると主張する。
自転車に乗り続けることによって見えてくる世の中のムダについても著者は痛烈に批判する。そして「大衆」がこの国を滅ぼすと危惧している。著者は規格化された人間、すなわち「大衆」からは大きくズレているが、世間の標準からズレていくことの快感を心から楽しんでいる。自転車に乗るということは自身の価値観・人生観にさえ革命をもたらし、「大衆」からの離脱を助けてくれる・・・著者はそのように言いたげである。
世の中はさらなる便利さ、快適さを求めてとどまるところを知らない技術革新が進んでいるが、人間性を無視した便利さは結局人間を破滅に追いやるだけであると強く警鐘を鳴らしている。「文明は自転車くらいがちょうどいい」が著者の口癖だが、自転車に乗ることによって自身の力で進むことの爽快さ、度を過ぎた便利さのバカバカしさに気づき、人間の尊厳を取り戻すきっかけになってほしいと切実に望んでいる。それこそが21世紀的ルネッサンスであり、「自転車革命」とも呼ぶべきものである。
文体は軽妙ですらすらと読み進めるけれども、人生経験を積んだ人ならではの深みがある。「本当の豊かさとは何か」について考えさせられずにはいられないだろう。10年近くの間を置いて続刊が発行されているけれども、少し方向性が異なるだけで著者の主張はずっと一貫している。「講座」の方はちょっと手に入りにくいかもしれないが、両方とも通して読んでみることをおすすめする。
特にサイクリストは絶対に読むべし!
![]() | おじさん自転車講座 長尾 藤三 (1999/04) 五月書房 この商品の詳細を見る |
![]() | おじさん自転車革命 長尾 藤三 (2001/08) 五月書房 この商品の詳細を見る |
もうずいぶん前に読んだ本だけれども、未だに忘れられないのがこの二冊。「おじさん」とは銘打っているけれども、何もおじさんだけでなく、若い人や女性も含め、すべての人におすすめしたい名著である。自転車に乗る人は共感するところが大きいだろうし、自転車に乗らない人には目から鱗が落ちること請け合い。僕の人生観にも影響を与えた自転車文学の最高傑作である。
この本はよくあるサイクリングのハウツー本などではなく、自転車のことについてそれほど詳しく書かれているわけではない。むしろ自転車の素晴らしさ、自転車の楽しみ方といったマインド面に重点が置かれている。しかし実はこの本の本質は自転車にあるのではなく、「大衆批判」にあるということが読み進むうちにわかってくる。
著者の長尾氏は「超」がつくアナログ人間であり、パソコン、メール、携帯電話、デジタルカメラなどの文明の利器をすべて拒否し、いっさい所有しないほどの徹底ぶりである。「便利は地獄、不便は極楽」が著者の持論だ。中でも便利なモノの代表であるクルマについて徹底的にこき下ろしている。
「大衆」とは、言い換えれば規格化された人間のことである。考え方や行動がパターン化しているということは企業にとって扱いやすいターゲットであり、大事な「お客様」となる。したがって世の中の経済原則はすべて大衆に照準を合わせているといっても間違いではない。中でもクルマは大衆が欲しがるモノの筆頭であり、クルマこそが大衆的なるものの象徴とも言えるのである。そこには人間の欲望のすべてと現代文明の矛盾のすべてが詰まっているのである。
著者はクルマを捨てて自転車に乗ることにより、忘れていた身体的感覚・・・ペダルを漕いで汗を流し、風を切る爽快さ、鼓動の高まり・・・を取り戻せと叫んでいる。行き過ぎた便利さは人間を不幸にし、不便こそが本当は楽しいのだということに気づかせるのに自転車は最高の手段であると主張する。
自転車に乗り続けることによって見えてくる世の中のムダについても著者は痛烈に批判する。そして「大衆」がこの国を滅ぼすと危惧している。著者は規格化された人間、すなわち「大衆」からは大きくズレているが、世間の標準からズレていくことの快感を心から楽しんでいる。自転車に乗るということは自身の価値観・人生観にさえ革命をもたらし、「大衆」からの離脱を助けてくれる・・・著者はそのように言いたげである。
世の中はさらなる便利さ、快適さを求めてとどまるところを知らない技術革新が進んでいるが、人間性を無視した便利さは結局人間を破滅に追いやるだけであると強く警鐘を鳴らしている。「文明は自転車くらいがちょうどいい」が著者の口癖だが、自転車に乗ることによって自身の力で進むことの爽快さ、度を過ぎた便利さのバカバカしさに気づき、人間の尊厳を取り戻すきっかけになってほしいと切実に望んでいる。それこそが21世紀的ルネッサンスであり、「自転車革命」とも呼ぶべきものである。
文体は軽妙ですらすらと読み進めるけれども、人生経験を積んだ人ならではの深みがある。「本当の豊かさとは何か」について考えさせられずにはいられないだろう。10年近くの間を置いて続刊が発行されているけれども、少し方向性が異なるだけで著者の主張はずっと一貫している。「講座」の方はちょっと手に入りにくいかもしれないが、両方とも通して読んでみることをおすすめする。
特にサイクリストは絶対に読むべし!
![]() | スロー快楽主義宣言!―愉しさ美しさ安らぎが世界を変える 辻 信一 (2004/08) 集英社 この商品の詳細を見る |
最近スローライフという言葉をよく耳にするようになったが、本当の意味で理解している人がどのくらいいるのだろうか? 休日に田舎でのんびり過ごしたり、畑で野菜を作ったりすることだけがスローライフではない。スローライフとは自然のリズムに合った生き方そのものを指すのである。それは修行僧のように禁欲的に生きることではなく、「本当に愉しいこと」を追求することが自然と調和した生き方になるのである。
著者は夏至と冬至の日の夜に明かりを消そうという「百万人のキャンドルナイト」運動の呼びかけ人でもある。たった2時間だけでいいから電気を消して、ローソクの明かりの下で静かに家族や友人と語り合う時間を持つことによって、そこから真の豊かさや愉しさを実感しようという趣旨である。
この本の中で著者は「スロー・スモール・シンプル」の3Sが世界を変えるキーワードであると主張している。地球温暖化をはじめとする今日の環境問題の根源は、すべてアメリカ型の消費社会にある。今日ではさまざまな娯楽やサービスが企業によって提供され、多くの人間は快楽さえもが金を出して買うものであると刷り込まれている。しかし商品化された快楽は地球環境の破壊をもたらし、「持続可能」な快楽ではない。それは石油を考えてみれば誰にも明らかであろう。著者はそれを20世紀型の「旧快楽」と呼ぶ。旧快楽を追求していけば、やがて人間をはじめ、すべての生物が生きる基盤を失うことになるのである。
著者は「スロー」な快楽こそが「持続可能」な快楽であると主張する。スローな快楽とは金を出して買うものではなく、自ら創造するものである。本当に愉しいものとは時間のかかるものであり、手間のかかるものである。だからこそスローな快楽と呼ぶのだ。
著者は江戸時代や縄文時代に戻れと言っているのではない。スローな快楽を追求することこそが希望に満ちた新しい世界を作るのだと主張している。それは遊びの世界だけでなく、仕事についても言えることである。愉しくない仕事・いやな仕事はすべきではない。愉しい仕事はそれ自体が快楽なのだ。「愉しさ・美しさ・安らぎ」を追求していくことが素晴らしい世界を作り、著者はそれを「新快楽主義」と呼んでいる。それこそがまさにスローライフなのだ。
著者はこの本の中で「大衆」や「自転車」については一切言及していないが、これはまったく切り離せない問題だと思う。金で買う快楽に洗脳されているのが「大衆」であり、スローな快楽に目覚めたのが自転車乗りだからである。自転車で一日かけて遠くへ行ったり、パーツを集めて自分で一から組み上げたりするのはとても時間がかかるし、手間暇のかかることである。でも愉しいだろう? それこそがスローな快楽なのだ。自転車一台あればいくらでも愉しめる自転車乗りはスローライフの達人である。だからこそ自転車乗りにぜひ読んでもらいたい一冊だ。本当に愉しいことには金がかからない。豊かさとは何か? 幸せとは何か? についてもう一度考え直すきっかけになるだろう。
![]() | 素晴らしき自転車の旅―サイクルツーリングのすすめ 白鳥 和也 (2004/05) 平凡社 この商品の詳細を見る |
これも昨年発行された新書で、サイクルファンの間では話題になっていたからすでに読んだ方も多いだろう。僕も昨年すぐに購入して読んだのだが、数あるツーリングノウハウ本の中でも中身の濃い名著だと思うので紹介しておきたい。
一般的なツーリング入門書というと、まず自転車の選び方から始まって、セッティングや乗り方、コースの選び方などのノウハウ面から入るものが多い。しかし本書の場合はまず序章で自転車の旅の楽しさや自身の自転車哲学について熱く語られていて、知らず知らずのうちにサイクルツーリングの魅力に引き込まれていく。自転車乗りならば、ウンウンとうなずけるところも多いだろう。そして次にツーリングのスタイルについて、どこを走るか、いかに走るかといったテーマに沿って自身の体験をもとにいろんなスタイルが提唱されている。ここまでの部分にかなりのページ数が割かれており、読者をサイクルツーリングの世界へと引き込んでいくのである。
そして次は自転車や用品の選び方といったノウハウ面に入っていくわけだが、ここでもやはり著者独自の体験が十分に盛り込まれていて、ツーリングに慣れた人にも大いに参考になるものである。あとは実際に旅をする上でのノウハウ、例えば道路上を走る上での注意すべきポイント、輪行の方法や宿の取り方に至るまで、およそ必要と思われることはすべて網羅されている。いずれも旅慣れた人ならではと思える細やかな気配りが感じられる。
著者は「自転車文学」というものに熱を入れられているが、終章のツーリングエッセイ「魚沼から会津への七日間」は著者の自転車哲学がよく表れている逸品である。読んでいるだけで旅をしているような気分にさせられる。ツーリングのベテランもこのためだけに買っても損はないだろう。
まったくの初心者対象というよりは、多少自転車をかじったことがある人、あるいは昔乗っていた人などが対象と考えた方がよいかもしれないが、最近流行らないサイクルツーリングの世界へ引き込むには十分な本である。この本にはなぜか懐かしさがあふれているのだ。ちょっとした縁で著者の方と直接メールでやりとりすることができたのだが、結構趣味や考え方が一致するところが多く、まだお会いしたこともないのに親しさを感じたものである。機会があれば一度お会いしてみたいものだ。
あ〜、またネタ切れだ。というか見積書書くのに忙しくて時間がなくなってしまった。ちょっとだけズルして時間を戻しておく。(^^;
というわけで困ったときの書評ネタだ。何を今さらと言われそうだが、自転車好きの間では有名な疋田智氏の本の紹介だ。
疋田智氏は自転車通勤を始めたことから自転車にはまり、「自転車ツーキニスト」という言葉を生み出した張本人である。テレビ局に勤める傍ら、いくつかの著書を出しているのだが、その中でも初期の作品に当たる『自転車生活の愉しみ』はおすすめできる一冊だと思う。僕も氏の作品を最初に読んだのはこの本だった。
本の内容は、自転車通勤を始めた経緯から、自転車の正しい乗り方、自転車の選び方、さらにはメンテナンスの方法といったごく一般的な自転車マニュアルで始まるのだけれども、独特の文体で自転車で通勤するのは楽しいという気持ちが十分伝わってくる。氏が言うには、家と会社が地続きであるというごく当たり前の事実に気づくこと、それが自転車通勤の最大の楽しさであると述べている。
しかしこの本で一番面白いのは、やはり後半のヨーロッパ自転車紀行だろう。「自転車先進国」と言われるドイツやオランダを訪ね、自転車が交通手段として活用されている事例を写真も交えて鮮明に伝えている。そしていかに日本の自転車行政が遅れているかを説く。日本では「エラい人」は自転車に乗らないことになっている。その「エラい人」たちが自転車行政を牛耳っているのだから、「共有自転車」のようなバカバカしいアイディアが出てくるのだと痛烈にこき下ろしている。このあたりは読んでいてなるほどとうならされ、実に愉快だ。
疋田氏は最近怒濤のように新著を出しているが、実は買ったまま読んでないのがいっぱい溜まっている。なかなか読むヒマがない。いずれもピリッとスパイスが効いていて痛快なのだけれども、やはり最初に読むのはこの本が一番おすすめだと思う。氏の自転車に対する考え方が最もストレートに表れている一冊だ。
というわけで困ったときの書評ネタだ。何を今さらと言われそうだが、自転車好きの間では有名な疋田智氏の本の紹介だ。
![]() | 自転車生活の愉しみ 疋田 智 (2001/12) 東京書籍 この商品の詳細を見る |
疋田智氏は自転車通勤を始めたことから自転車にはまり、「自転車ツーキニスト」という言葉を生み出した張本人である。テレビ局に勤める傍ら、いくつかの著書を出しているのだが、その中でも初期の作品に当たる『自転車生活の愉しみ』はおすすめできる一冊だと思う。僕も氏の作品を最初に読んだのはこの本だった。
本の内容は、自転車通勤を始めた経緯から、自転車の正しい乗り方、自転車の選び方、さらにはメンテナンスの方法といったごく一般的な自転車マニュアルで始まるのだけれども、独特の文体で自転車で通勤するのは楽しいという気持ちが十分伝わってくる。氏が言うには、家と会社が地続きであるというごく当たり前の事実に気づくこと、それが自転車通勤の最大の楽しさであると述べている。
しかしこの本で一番面白いのは、やはり後半のヨーロッパ自転車紀行だろう。「自転車先進国」と言われるドイツやオランダを訪ね、自転車が交通手段として活用されている事例を写真も交えて鮮明に伝えている。そしていかに日本の自転車行政が遅れているかを説く。日本では「エラい人」は自転車に乗らないことになっている。その「エラい人」たちが自転車行政を牛耳っているのだから、「共有自転車」のようなバカバカしいアイディアが出てくるのだと痛烈にこき下ろしている。このあたりは読んでいてなるほどとうならされ、実に愉快だ。
疋田氏は最近怒濤のように新著を出しているが、実は買ったまま読んでないのがいっぱい溜まっている。なかなか読むヒマがない。いずれもピリッとスパイスが効いていて痛快なのだけれども、やはり最初に読むのはこの本が一番おすすめだと思う。氏の自転車に対する考え方が最もストレートに表れている一冊だ。
ネタが切れたときのためにまた一つカテゴリーを追加した。最近読んだ本や過去に読んだ本で印象に残っているものを紹介するカテゴリーだ。第一回目として、僕が会社を辞める前に読んでいたフリー・SOHOに関する書籍を紹介しておこう。現在でも入手可能だから、少しでも会社勤めがイヤになった人は読んでみることをおすすめする。
著者の野口哲典氏はマーケティングリサーチ会社勤務を経てフリーライターに転身したフリーランサーである。ちょうど自分と同じようにサラリーマン経験が長く、ある程度年齢を経てからフリーになったという点にまず共感を覚えた。
本の構成は大きく分けてフリーになることの意義や心構えなどの精神面と、実際の営業や経理など実務面とに分かれる。それぞれが半分くらいのボリュームを割いて書かれている。
精神面では「自分自身のために働く」というフリーの誇りと、誰にも束縛されず時間を有効に活用できるというフリーの特権について実例を挙げながら力強く述べている。その一方で経済的な不安定さや将来への不安、社会的信用の低さなど、フリーのデメリットも多く取り上げ、フリーになるのはいいことばかりじゃないと釘を刺している。その点でメリットばかりを取り上げてフリーになることを勧める無責任な本とは異なる。
実務面では「どうやって仕事を取ってくるか」という誰もが行き当たる営業の問題について、具体的に事例を出して方法を説明している。また税金や経費など経理面の問題や、仕事の受け方・見積の出し方など具体的な運用面についても触れられていて、フリーになって間もない人の参考になる。
ただ、この本で一番いいと思うのは「フリーの心構え」の部分だと思う。仕事をする上で守らなければならないこと、そして誰もが直面する「不安」との闘い方についてページ数を割いて詳しく述べられている。フリーとは自由を得る代わりに不安と常に隣り合わせになる生き方である。著者は不安を敵に回すのではなく、不安と友達になろうと説いている。不安といかにうまく付き合うか、これがフリーとして成功するカギであるともいえる。
僕は会社を辞める前にこの本を読んで、「自分自身のために働く」ということの素晴らしさに大いに感動した。もちろんメリットだけでなくデメリットも慎重に検討した上で、メリットの方が大きかったからフリーになったのである。いま会社を辞めようかどうか迷っている人には大いに背中を押してくれる本であると思う。決定的になった言葉は「やらないで後悔したくない」である。「あの時辞めておけばよかった」と後悔しながら死にたくはない。辞めないで後悔するより、辞めて後悔した方がたとえ失敗したとしても納得できる人生である。
そしてフリーになった今、もう一度読み返してみると、不安との闘い方や営業の仕方など、フリーを続けていく上でのノウハウについて学ぶところが多い。フリーになってはみたものの仕事がない、続かないという人(つまり僕のことだ!)に大いに救いを与えてくれる本である。仕事の予定が入っていないととんでもなく不安になるものだが、フリーは常に楽天的でなければならないのだ。「まあ生きていれば何とかなる」、そのくらいの気持ちでなければやっていけない。これからフリーになろうという人、フリーになったけれどもうまく行っていない人、どちらにもおすすめできる良書である。
![]() | 自由業・フリーで生きるためのマニュアル―就職しないでメシを食う法 野口 哲典 (1999/11) 明日香出版社 この商品の詳細を見る |
著者の野口哲典氏はマーケティングリサーチ会社勤務を経てフリーライターに転身したフリーランサーである。ちょうど自分と同じようにサラリーマン経験が長く、ある程度年齢を経てからフリーになったという点にまず共感を覚えた。
本の構成は大きく分けてフリーになることの意義や心構えなどの精神面と、実際の営業や経理など実務面とに分かれる。それぞれが半分くらいのボリュームを割いて書かれている。
精神面では「自分自身のために働く」というフリーの誇りと、誰にも束縛されず時間を有効に活用できるというフリーの特権について実例を挙げながら力強く述べている。その一方で経済的な不安定さや将来への不安、社会的信用の低さなど、フリーのデメリットも多く取り上げ、フリーになるのはいいことばかりじゃないと釘を刺している。その点でメリットばかりを取り上げてフリーになることを勧める無責任な本とは異なる。
実務面では「どうやって仕事を取ってくるか」という誰もが行き当たる営業の問題について、具体的に事例を出して方法を説明している。また税金や経費など経理面の問題や、仕事の受け方・見積の出し方など具体的な運用面についても触れられていて、フリーになって間もない人の参考になる。
ただ、この本で一番いいと思うのは「フリーの心構え」の部分だと思う。仕事をする上で守らなければならないこと、そして誰もが直面する「不安」との闘い方についてページ数を割いて詳しく述べられている。フリーとは自由を得る代わりに不安と常に隣り合わせになる生き方である。著者は不安を敵に回すのではなく、不安と友達になろうと説いている。不安といかにうまく付き合うか、これがフリーとして成功するカギであるともいえる。
僕は会社を辞める前にこの本を読んで、「自分自身のために働く」ということの素晴らしさに大いに感動した。もちろんメリットだけでなくデメリットも慎重に検討した上で、メリットの方が大きかったからフリーになったのである。いま会社を辞めようかどうか迷っている人には大いに背中を押してくれる本であると思う。決定的になった言葉は「やらないで後悔したくない」である。「あの時辞めておけばよかった」と後悔しながら死にたくはない。辞めないで後悔するより、辞めて後悔した方がたとえ失敗したとしても納得できる人生である。
そしてフリーになった今、もう一度読み返してみると、不安との闘い方や営業の仕方など、フリーを続けていく上でのノウハウについて学ぶところが多い。フリーになってはみたものの仕事がない、続かないという人(つまり僕のことだ!)に大いに救いを与えてくれる本である。仕事の予定が入っていないととんでもなく不安になるものだが、フリーは常に楽天的でなければならないのだ。「まあ生きていれば何とかなる」、そのくらいの気持ちでなければやっていけない。これからフリーになろうという人、フリーになったけれどもうまく行っていない人、どちらにもおすすめできる良書である。










